1. 階層アーキテクチャ

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1.1層構造が必要な理由

コンピュータネットワークは、世界共通の規格を会議を繰り返して決めてそれをみんなで使うというよりは、いろいろな人や組織が独自に良いと思うものを作り世に広めた結果が事実上の標準として受け容れられていくというパターンで進歩してきている。

当然細部の仕様はそれぞれのベンダーが「良い」と思うもので構成されているが、かつてのメインフレーム時代のように一つのベンダーが電線からユーザアプリケーションまですべて提供するという構造ではないため、「ありもの」の環境の上でいかにうまく実装していくかがオープン化とともに重要になっている。

そのために考えられたのが、ネットワークをその機能ごとに上下関係のある複数の層(layer)に切り分けて構成し、部分的に入れ替えを可能とするような階層構造を持つネットワークアーキテクチャである。教科書的に有名なものとしては、OSI(Open Systems Interconnection)の基本参照モデルがある。

このような階層構造にしておくと、新しいシステムを実装したいときには既存の層を置き換えるようにすれば「ありもの」のシステムを使うことができる。マルチベンダー環境ではこのことが非常に重要である。

ただし、階層構造を持つということは、それぞれの層ごとある程度完結した機能を持つ必要があるため、ネットワーク自体の純粋な効率を考えると無駄がでることはさけられない(たとえば複数のヘッダが必要になるなど)。かつてネットワークもコンピュータも遅く高価だった時代にはオープン化のために階層構造を持たせるということは理想主義者の贅沢であると考えられていた。

1.2 OSI基本参照モデル

ネットワークの階層構造として教科書的に非常に有名なものとしては、OSI基本参照モデルが挙げられるだろう。このモデルではネットワークを機能の異なる7つの層の積み重ねで構成している。

表1.1 OSI基本参照モデル
名称 機能 使われる情報機器 備考
上位層 第7層 アプリケーション層 ファイル管理・電子メールなどの実際のアプリケーション向けのサービス機能を提供 ゲートウェイ 意味内容を伝える
第6層 プレゼンテーション層 データ構造や情報の表現形式を管理 表現形式
第5層 セッション層 プロセス間通信の制御 会話
下位層 第4層 トランスポート層 透過的なデータ転送を実現する データ
第3層 ネットワーク層 最終的な通信相手との通信経路の確立・制御 ルータ 通信制御
第2層 データリンク層 最寄りのネットワーク内での通信 ブリッジ フレーム
第1層 物理層 伝送媒体の物理的・電気的条件やコネクタの形状などを規定 リピータ 電気信号

このモデルで意味がある部分は、通信ということを上下の階層構造に区分することによって層ごとに入れ替え可能なシステムを作ることができると明確にしたことにある。個別の層の名前や機能については、教科書的および試験的には頻出であるが実務的にはあまり意味がない。現実に存在するシステムはそれぞれの都合で作られているため、OSIモデルの層区分にきっちり合った区分で切れるとは限らないからである。

1.3 TCP/IPでの階層モデル

インターネットで実際に使われているTCP/IPと総称されるプロトコル(詳細は後述)は、OSIの7層モデルより粗い階層構造となっている。また、各階層は厳密にOSIモデルに対応した内容ではない。これはTCP/IPを考えた人々がOSIモデルを軽視したわけではなく、TCP/IPの基本的な仕組みができたころにはOSIモデル自体が存在しなかったのである。

表1.2 TCP/IPでの階層構造
層の名前 内容 OSIモデルでの対応層
アプリケーション層 利用者がサービスを利用するための手順を定義する 第5層から第7層
トランスポート層 サービスを提供するプログラム間での通信インターフェースを提供する 第4層と第5層の一部
インターネット層 サービスを提供するコンピュータ間の通信インターフェースを提供する 第3層
ネットワークインターフェース層 物理的な電線を通じてデータの転送を直接行う手段を提供する 第1層と第2層

このような階層構造になっていることによって、ネットワークへの接続方法がダイアルアップだろうとLANであろうと関係なく同一のプログラムを使って電子メールやWebを利用することができるわけである。

問題1.1

ネットワークが階層構造を持っているとどのようなメリットとデメリットがあるかを考察しなさい


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